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カンパニーレ-鐘楼-
2009-09-07 Mon 17:09
…別に題と関係ない気もする。電子辞書のお気に入りの単語欄から。鐘塔とか鐘楼という意味なのです。窓からジョット(ボンゴレさん家の初代様と同じスペルっぽい)が建てた鐘楼が見えるアジトからの悲劇。よってフィレンツェ。MOIRAI。本編ではないが。



*



彼女は獣だ。
そして私は神だった。



美しい黒の獣。雌で、しなやかな胴体からほっそりした四肢が伸びている。光を反射して輝く一対の眼。艶やかな毛並み。その姿には、漆黒のオブジェのように滑らかで精密な美しさが備わっている。
だが、そんな優美な見た目に反して獣は獰猛だった。
目の前で繰り広げられる獣の狩猟。彼女の夕食の時間。絶対的な強さをもって獣の狩りは行われる。
牙が煌めく。舞い踊る血飛沫。奏でられる断末魔。
おぞましい、というべき光景。しかし彼女は、その静かさで、その気高さで、そのしなやかさで、しめやかな宴へと変えていく。
澄んだ咆哮。刹那の疾駆。軽やかな跳躍。
狩ってゆく。獲物たちは次々地に伏す。

「そのぐらいにしとけ、柳美」

男の声がした。獣は首をもたげる。

「何よスミス。」

不機嫌そうな声。血に酔った獣の声は鋭い。

「もう充分だろ。依頼はあくまで相手の組織の動きを牽制するための、見せしめなんだぜ?壊滅させることは無いだろ」

「…つまらない」

 鉄の棒にべったりと付いた血を振るって落とす。

「せっかく久し振りに暴れられたのに」

 さらりと長い黒髪をなびかせて、獣はそうのたまった。

「そういや、そこで腰抜かしてる餓鬼は何なんだよ」

 獣の女は興味無さげに部屋の隅の少年を振り返る。

「この組織の若大将。否、神様かしら?その頭脳とカリスマ性で組織内では崇拝されていたようね。もっとも、使えるのは頭だけだったみたいだけど」

「あっそう。」

 答えを聞いてすぐに興味を失ったらしい。すぐにその少年を忘れてしまったように、男は辺りを見回す。そして口をぽかんと開けた。

「おい…生き残ってるのは?」

「この坊やだけ」

「…はぁ?まさか、本当に全部狩り尽くしてたのかよ?」

「悪い?」

 悪びれもなく返答した女に、男は呆けた。「ちょっと待て」と男は慌ただしく携帯電話をいじる。依頼人にメールでも送信したのだろう。それほどかからず画面が光る。男は画面から顔を上げた。

「…依頼人曰く。ならば好都合。いっそのこと壊滅させろ、と。」

 女の口の端が妖しく歪んだ。

「柳美、そいつを殺せ」

「私に命令するな」

 そう口答えしながらも、その目は爛々と輝いている。
 片隅の少年の目は依然虚ろ。

 彼の未来など、この獣に喰い尽くされて跡形もないのだ。
 断罪の獣。悪魔じみた瞳、漆黒の毛並み、しなやかな肢体の、美しき獣。
 彼は断罪を逃れる免罪符など、持っていやしない。故に…


「いつかあの世で会いましょうね、坊や」


 断罪の鉄槌が、今、振り上げられる。彼の罪は罰によって滅され、罰は罪のもとに行われる。この殺し屋によって。女は嘲笑った。


「いただきます」


 痛みなど無い。鉄の棒が胸を貫く。
 獣に牙を突き立てられ、最期に彼が見たのは夜空の満月へとそびえ立つ、黒いシルエット。


      それは無感情な鐘の音が響き渡る、カンパニーレ。




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